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小林よしのり
2014.3.29 13:52

スマラン慰安所「白馬事件」


村山談話・河野談話に未来はあるか?

45回 スマラン慰安所「白馬事件」(その1)

 

前回少し触れた、スマランの慰安所を巡る事件について、

少し詳しく解説しておこう。

 

1944年(昭和1931日、インドネシア・ジャワ島の

都市・スマランに「将校倶楽部」「スマラン倶楽部」

「日の丸倶楽部」「青雲荘」の4軒の慰安所が開設された。

だがその慰安婦の中には、売春をすることを知らされない

まま収容所から連れて来られたオランダ人女性が

含まれていた。

この4軒の慰安所はこの地域の軍政を担当する第16軍司令部

から閉鎖命令を受け、約2ヶ月後の4月末までに

全部閉鎖された。

 

16軍軍政監部の鈴木博史大尉の証言によれば、

慰安所でひどい悲鳴が聞こえるとの話を聞きこみ、

山本軍政監(兼第16軍参謀長)へ伝えると、山本は

“まずい、すぐ止めさせろ”と怒り、翌日に閉鎖命令が出た

……のちに彼女たちを集め申し訳のないことだったと

謝罪した」ということである。

つまり、これはあくまでも出先部隊が起こした不祥事であり、

司令部は決してそのようなことを許してはいなかった

ということには注目しておかなければならない。

 

戦後、スマラン慰安所の件は女性たちの告発により、

バタビア(現・ジャカルタ)におけるオランダ軍事法廷の

BC級戦犯裁判にかけられた。

被告は慰安所設置に関わった軍人や業者など12人で、

うち11名が有罪で1名が死刑、

残りは懲役2年から20年の有期刑だった。

ただ一人死刑となった岡田慶治少佐は慰安所設置の

実務担当者で、慰安所設置を命じた上官の大久保朝雄大佐が

自決、池田省三大佐が発狂したため、

一人で監督責任を負わされた形になってしまった。

 

岡田少佐は獄中手記で次のように書いている。

「将校クラブの婦人たちをよく可愛がってやったつもり

 ……その彼女たちが告訴している。それも嘘八百を並べて

 ……時勢が変ったので我々に協力していたことになっては

彼女達の立場がないのかと想像

 ……起訴状を見ると首謀者にされている

 ……「そうか飼犬に手を咬まれたのだ。

もう何も言うことはない」と覚悟した

 ……敵の銃口の前に立って、日本軍人の死に態を見せて

やることではなかろうか

(つづく)

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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